「蘆刈」の2回目。
自己満足かもしれないが、テキストを細かく読みながら解説したり時々脱線したりするのは、オンラインの講義方法としては悪くない。ずっとこれでやりたいとは全然思わないけど。
そして精読するとついディテールが気になってしまい、色々調べたくなる。マニアックというのではなく、ディテールの背後にその語りの時代的・社会的な背景があるので、細部に神が宿るとはこういうことかと思う時がある。
移動経路、地図、衣装、髪型、等々。細部のための細部には全く関心がないが、世界観や行動様式の全体的な枠組みに関わってくる細部には興味を惹かれる。
明治中期に、八軒家から蒸気船に乗って淀川を遡り、巨椋堤を数キロも歩くという経験について想像してみたりする。
今日のポイントは、ヒロイン?の「お遊さま」がどのような存在として記述されるかということ。アラン・コルバンの『夢の女』に描かれる、文学史上普遍的な、アウラを纏った到達不能の女性像であることは確かである。
それが、霞がかかったような、輪郭がぼやけた相貌として描写される。そこでキーワードとなるのが、谷崎が使う「蘭たけた」という言葉。これを「ろうたけた」と読ませる。当然「臈長けた」という言葉を連想するが、意味が違う。四君子の「蘭」に関係があるのかとも思うが分からない。古語の「らうたし」が背後にあるとも感じられ、『源氏物語』の「若紫」にある「らうたげ」も検討してみる。
いろいろと考えてはみたが分からない。
聴講希望と連絡を受けた人の中に、「蘆刈」は前から好きなんですというメッセージもあり、意外にファンはいるのだとも思う。
時間がなくて最後までは行けず、この物語の眼目である異常な三角関係の意味については、次回に話します。