◉ れいわTANUKI問答ポンポコ 010 ◉
【Q】死ぬのはいけないことなのでしょうか。死ぬまで生きなければならないと思っていますが、生きたいと思えない世界なのに生きることこそ正しいとされているような現在は生きづらいと思うのです。
【A】死ぬのは、自然なことです。そして自然は「善悪の彼岸」なので、いいとかいけないとかいった判断は通用しません。だから死ぬというのは、いけないことでもいいことでもなくて、ただ死ぬということ、それだけです。
人間はとかく死について、ゴチャゴチャ理屈を並べたがります。それは一方では不安があるからで、どんなに賢い人間でも、自分という存在がなくなるという状態を、ちゃんと想像することができないからです。また他方では、とりわけ(不幸にも)この世で名誉や権力や財産を蓄えてしまった人は、自分の死後それをどうすべきかということに悩むからです。そうでない人も、子供の行く末などを心配します。
だがいずれにしても、まったくの徒労です。生きている限り、死を適切に理解することはできないし、また自分の死後の世界をいくら整えようと努力しても、それは決して思い通りにはなりません。どんなに偉い人も、生きていた時に抱いた理想は、死ねばあっという間に忘れ去られていきます。
それでいいのです。そうでないと世界は続いていきません。
質問された方が、この世界を生きたいと思えないのは悲しいことです。しかしそういう生きづらさは、「生きることこそ正しいとされている現在」から生じているのです。「生きることこそ正しい」というのは、哲学用語で「ニヒリズム」と言います。それは「今すぐ死ぬのが正しい」と言ってるのと同じことなのです。
生きていくにはむしろ、「いつ死ぬかもしれないし、そうなったら仕方ないが、今日はとりあえず生きる」というくらいの態度の方が強いのです。生が死を抱きかかえつつ進むのが自然ですから、この方が自然に即した態度なのです。
死は生の敵ではなく、生の不可欠な一部分です。幼児や子供が大人よりも生き生きとして見えるのは、彼らが死から遠いからではなく、大人よりも死に近いからなのです。