よっかいちで、まちこうばのしゃちょうやっとるおじいが、きょうとの〈けんにんじ〉の〈かんのんさん〉ぬすんだゆうて、けいさつにつかまらはった。そのほかにもぎょうさん、〈ほとけさん〉いえにあつめたはったそうな。ほんでときどき、きんじょのひとらに、みせたりしとったらしいね。あほなおじいやけど、まあ〈ほとけさんら〉は、そんな、おこったはらしまへん。てれびやらしんぶんでは「ぶつぞうをおがんできた、ひとびとのそぼくなしんこうしんをふみにじる、ひれつなこうい」とか、ゆうたはりますけど、〈ほとけさん〉らごじしんは、「あーあ、みつかってしもた。しゃあない、そろそろかえろか」て、ゆうたはりましたわ。いっつも、てらのほんどうの、せまいさいだんのなかにすわって、つぎからつぎからくるかんこうきゃくには、ええかおみせとかんとあかんし、てれびやざっしのしゅざいはくるし、じゅうしょくは〈ぶんかざい〉していきにしとるし、なんやかんやでほんま、〈すとれす〉かんじたはったんや。
そうゆうときに、このあんましあたまのようない、〈ぶつぞうこれくたー〉のおじいがきよったさかい、ほとけさんら、みなでそうだんしはって、「おい、このおとこに、われわれみな、ちょっとさらわれて、しばらく、みえけんあたりにえんそくにいくゆうのんも、わるないんやないか」ゆうて、あみださんがいわはったら、「そやそや、そうしまひょ。うちまえから、〈なばなのさと〉もみたかったし、ええきかいや」ゆうて、かんのんさんがいわはって、ほんでまあ、こうゆうことになったんですわ。〈ほとけさん〉らが、ごきぼうしはらへんかったら、まっぴるまに、こんなおおきなもん、ぬすみだすやなんて、でけまへんわな。〈ほとけさん〉ら、ちかごろのにんげんが、やれ〈ぶんかしげん〉や〈かんこうしげん〉やとかゆうて、ちやほやすんの、ええかげんにしてんかて、おもたはりましたんやね。そやけど、ちょっときんじょに、いえでするやなんて、かいらしとこ、あるやおまへんか。
めいじのはじめ、にほんじんが、このくには〈せいよう〉みたいにならなあかんゆうて、もう〈ぶつぞう〉みたいなうっとしいもん、いらんわ、ゆうて〈はいぶつきしゃく〉ゆうのんをやらはったとき、ほとけさんらはないしん、「ああ、せいせいした」ゆうて、おもたはったんやけど、そしたらせいようじんの、ものずきながくしゃのおかたらが、「きちょうなぶんかざいを、なんちゅうことすんねん」ゆうて、もっていかはった。ほとけさんらは、「やれやれ」おもてはったんやけど、この〈にじゅういっせいき〉になって、まるでにほんじんぜんたいが、めいじじだいのせいようじんみたいに、なってますのや。〈きちょうなぶんかしげん〉やとか、〈ひとびとのそぼくなしんこうのたいしょう〉やとかゆうて、だいじにされても、そんなん、だれがうれしいねん。じぶんがそうされたら、どんなきもちか、そうぞうしてみなはれ。「やれやれ、またかいな」ゆうのんが、ほとけさんらの、しょうじきなきもちやろね。
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